司法書士の業務内容を徹底解説 ~成年後見編~
成年後見制度とは
成年後見制度とは、認知症や障がいなどにより判断能力が低下した方が、法的な保護を受けながら生活できるように、財産管理や身上保護の面でご本人を支援する者(成年後見人等)を選任する制度です。
成年後見制度は、「法定後見制度」と「任意後見制度」の2つに分けられます。
法定後見制度は、判断能力が低下した後に家庭裁判所に申立を行うことで、家庭裁判所により後見人が選任される制度です。支援が必要な方は判断能力の程度に応じて「後見」「保佐」「補助」の3つに分類され、それぞれ後見人等がサポートできる範囲が異なります。
- 後見:判断能力を喪失した場合に、後見人が日常生活や財産管理を全面的に支援します。
- 保佐:判断能力が著しく不十分な場合に、保佐人が重要な契約や財産管理を支援します。
- 補助:判断能力が不十分な場合に、補助人が必要な範囲でサポートします。
一方、任意後見制度は、判断能力がしっかりしているうちに、支援を受ける人が自ら任意後見人を選び、将来のために任意後見契約を結ぶ制度です。実際に後見開始の効力が発生するのは判断能力が低下した時ですが、本人の意思を尊重しながら、自ら選んだ信頼できる人にサポートをお願いできる点が法定後見制度とは異なります。
超高齢社会における成年後見の役割
長寿化が進み、多くの方が長生きされるようになった一方、高齢化も著しいスピードで進んでいます。10年以上前に超高齢社会に突入した日本は世界でも類を見ないスピードで高齢化が進み、2000年時点で17.4%だった高齢化率が2030年には30%に達すると予測されています。(※)
高齢化が進めば、必然的に認知症を発症する高齢者も増えるでしょう。特に、認知症を発症すると財産管理や契約手続きの面でトラブルに巻き込まれるリスクが増えるため、こうした方々をどうサポートするかが日本社会全体の課題として挙げられています。
そこで、判断能力が低下した人の財産管理や身上保護を支援するための制度「成年後見制度」がより一層広く普及し、活用されることが求められているのです。成年後見制度が普及することにより、判断能力が低下した人をトラブルから守れる上、ご本人が安心して生活できる環境を整えられるでしょう。
※内閣府|令和6年版高齢社会白書(全体版)第1章 高齢化の状況 第1節 高齢化の状況 1 高齢化の現状と将来像 図1-1-2
司法書士が取り扱う成年後見の業務内容
司法書士が取り扱う成年後見の業務内容として、以下の3つが挙げられます。
- 申立における必要書類の作成
- 後見人への就任
- 後見監督人への就任
申立における必要書類の作成
司法書士が取り扱う成年後見の業務内容として、申し立てにおける必要書類の作成が挙げられます。
成年後見制度を利用するためには後見開始の申立が必要です。しかし、申立に必要な書類の作成は煩雑であり、法律の専門知識を有しない方がご自身で行うのは時間も労力も大きいため、かなりハードルが高いといえます。
そこで、司法書士が法定後見制度における後見開始等申立書や、任意後見制度における任意後見契約書などの提出書類の作成を代行することで、ご本人やそのご家族が負う負担を軽減できます。このほか、申立書以外の提出書類を一部収集したり、家庭裁判所とのやりとりをしたりすることも可能であるため、申立手続きがスムーズに進行するようにサポートを行います。
後見人への就任
後見人への就任も、司法書士が取り扱う成年後見の業務内容の1つです。法定後見制度では、家庭裁判所がふさわしいと判断した人が後見人等に選任されます。一方、任意後見制度では、ご本人から依頼があった場合に任意後見人に就任します。
後見人の業務を細かく分けると、以下の3つになります。
- 財産管理
- 身上保護
- 裁判所への報告
財産管理
後見人は、被後見人が持つ財産を適切に管理することが求められます。例えば、被後見人の預貯金の管理を適切に行い、生活費や必要な支出が滞らないようにします。また、もし被後見人が不動産を所有している場合、その物件の維持管理や、場合によっては売却の手続きも必要です。ただし、高額な資産を処分する場合には裁判所の許可が求められるため、後見人は裁判所と連携して判断を行います。
身上保護
身上保護とは、被後見人が安心して生活できる環境を整えるために行う法律行為のことです。具体的には、被後見人が暮らす住居や入居する施設、入院する病院などにおける契約手続きなどが挙げられます。契約手続きを行う際は、必要に応じて施設や病院の担当者と連絡を取り合い、適切な対応をとることが必要です。
裁判所への報告
後見人は業務の内容を定期的に裁判所へ報告しなければなりません。財産の管理状況を示す「収支報告書」を作成し、被後見人の財産が適切に管理されているかを裁判所に確認してもらいます。こうした報告は被後見人の保護を強化し、後見業務が適正に行われているかを裁判所が判断するために重要だといえるでしょう。
後見監督人への就任
成年後見制度では、後見監督人が選任される場合があります。後見監督人とは、後見人が適切に業務を行っているかを監督する役割を担う人です。
後見監督人は、後見人の財産管理や身上保護が適切に行われているかを定期的に監視し、問題がある場合には改善を求めます。また、監督の結果を裁判所に報告する義務があり、後見人の業務状況を詳細に記録した「監督報告書」を作成して提出します。
さらに、後見監督人は、後見人が業務を怠ったり不正を行ったと判断した場合、裁判所に対して後見人の解任請求を行う権限を持っています。このような監督人の役割によって、被後見人の利益がより確実に守られる仕組みが成年後見制度には組み込まれているのです。
法定後見開始までの流れ
ここでは、成年後見制度のうち法定後見が開始されるまでの流れを簡単に紹介します。法定後見が開始されるまでの流れは、以下のとおりです。
- 申立て
- 裁判所による調査
- 裁判所による審判
- 審判の告知・通知
- 法定後見開始
申立て
法定後見を利用するために、まず本人や家族が家庭裁判所に申立てを行います。申立てには、申立書のほかに本人の財産目録や生活状況、医師の診断書などが必要です。
裁判所による調査
申立内容をもとに、裁判所は後見の必要性を確認するための調査を行います。本人の生活状況や判断能力を確認するために家庭裁判所調査官による面接が行われることもあります。また、場合によっては本人の判断能力を客観的に把握するために医師による鑑定を求められることもあります。
裁判所による審判
調査結果を踏まえ、裁判所が後見を開始するかどうかを審判します。必要と判断されれば、適任の後見人を選任し、本人が適切な支援を受けられる体制を整える決定を行います。
審判の告知・通知
裁判所が出した審判の結果は、申立人や本人、家族に対して「審判所謄本」という形で正式に告知・通知されます。
法定後見開始
後見人等の権限が法務局に登記されると、正式に法定後見が開始されます。
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