譲渡制限株式とは、譲渡(売却)に関して制限が設けられている株式のことを指します。
株式を譲渡する際に会社の承認が要件として設けられており、譲渡制限株式を発行する会社側に様々なメリットがあります。
スタートアップ企業や中小企業では、会社の乗っ取りや、意図しない人物に自社株式が渡ってしまう事を防止する目的で用いられることが多いようです。
株式譲渡の自由と譲渡制限
本来、株式は自由に譲渡できるのが原則です。(会社法127条)
株主は一定の場合を除き、会社から出資金の払い戻しを受けられないため、出資した資本回収の手段として株式譲渡を自由にする必要性があるためです。
ただし例外として、会社の定款に株式の自由譲渡を制限することを定めることができます。具体的には、「譲渡による株式の取得については、株主総会(取締役会、代表取締役)の承認を要する」 というような規定を設けます。
株式が自由に譲渡できると誰でも株主になりうるため、信頼できる人だけを株主にしたい場合などに、この譲渡制限を定めることが多いです。実際、家族経営の会社や中小企業は譲渡制限を定めている会社がほとんどです。
なお、譲渡制限については、種類株式として設定する以外に、株主間契約としても設定できます。例えば、譲渡に際して経営株主の承認を得る旨を設定することで、実質的に譲渡制限することが可能です。
公開会社と非公開会社
株式の全部または一部に譲渡制限の定款の定めがない会社を公開会社といいます。
それに対して、発行する株式の全部に譲渡制限の定款の定めがある会社を非公開会社(株式譲渡制限会社)といいます。
公開会社だからといって必ず上場しているわけではありませんが、株式が自由に譲渡され不特定多数が株主になりうることから、大企業向きの会社形態といえ、会社の機関設計にも一定の制限が課されます。
公開会社 | 非公開会社 | |
---|---|---|
取締役会の設置 | 必須(取締役3名以上) | 任意 |
監査役の設置 | 必須 | 任意 |
監査役の権限 | 業務監査および会計監査(義務付け) | 会計監査のみとすることも可能 |
取締役の任期 | 最長2年 | 最長10年 |
監査役の任期 | 最長4年 | 最長10年 |
譲渡制限株式の譲渡の流れ
譲渡制限株式の発行会社が譲渡を承認する、または否決する場合にも、共通の手続きの流れが存在します。
- 譲渡希望の株式の譲渡制限を確認(定款・登記事項証明書にて)
- 譲渡対象株式の会社に対して承認請求(株式譲渡承認確認書の提出)
- 株主総会もしくは取締役会で承認の諾否を決定
譲渡を承認する場合の流れ
会社から譲渡を承認された場合でも、すぐに譲受人に対して株式を譲渡できるわけではありません。
次の流れに沿って手続きを進めていく必要があります。
譲渡承認後の流れ
- 株式譲渡の承認通知の到着
- 株式譲渡契約書の作成・締結(書面による譲渡の事実および取り決めの明記)
- 株主名簿書換請求(譲渡人・譲受人の共同請求)
- 株主名簿記載事項証明書の交付
譲渡を承認しない場合の流れ
会社から譲渡請求を否決された場合、以下の流れで手続きを進めるのが一般的です。
譲渡否決後の流れ
- 株式譲渡の否決通知の到着(2週間以内)
※定款でそれを下回る期間が定められている場合はその期間 - 買取先の決定(会社または指定譲受人またはその両方)
- 株主総会特別決議による買取承認
- 供託(会社または指定譲受人による)
- 株券供託(譲渡の対象となる株式の株券が発行されている場合)
- 協議・申立て
- 裁判所による適正価格の算定(合意が得られなかった場合)