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グレーゾーン解消制度

法制関連

グレーゾーン解消制度とは、産業競争力強化法に基づき、事業者が現行の規制の適用範囲が不明確な場合にも、安心して新事業を行えるよう、具体的な事業計画に沿ってあらかじめ規制の適用の有無を確認できる制度です。

制度趣旨

事業主が新たな事業を計画するにあたり現在の規制の適用範囲が不明確な場合に、具体的な事業計画に則してあらかじめ規制適用の有無を確認できる制度
-産業競争力強化法に基づき導入-

グレーゾーン解消制度の活用基準

次の点が不明確な場合に活用することができます。

  • 新規事業が関連法令の規制対象となるか否か
  • 取得しなければならない許認可の有無
  • 遵守すべきルールがあるか否か

グレーゾーン解消制度の成り立ち

グレーゾーン解消制度が導入されるまでの背景に、次の流れがありました。

  1. 担当省庁等への直接照会
  2. 法令適用事前確認制度(ノーアクションレター)
  3. グレーゾーン解消制度

順を追って解説していきましょう。

担当省庁等に直接照会をとる伝統的な手法です。

  • 所轄法令の解釈
  • 当該事業へのあてはめ

会社名を明らかにして照会を行う場合、匿名ベースで法律事務所等から紹介を行う場合のどちらもあります。

会社が特定されるデメリットがある反面、担当省庁との関係構築には効果的であり、また回答結果が公表されることなく事業モデルを検討できるメリットがあります

抽象的な法令の解釈しか示さない、または事業の事実関係を踏まえた事案に対する回答をしない省庁等もあり、当該事業を行ってよいのか不明確なままのケースもありました。

法令に抵触するか否かについての予見可能性を高めるため、特定の法令の規定適用について事前照会できるようにする措置として、2001年より導入されました。
(本稿では以下、ノーアクションレター制度と記します。)

行政の公正性の確保・透明性の向上を図るため、照会内容と行政機関の回答を公表する事とされており、2001年以降多くの省庁において導入されており、2022年現在でも利用することができます。
(消費者庁HP:法令適用事前確認手続(ノーアクションレター制度)

適用の範囲

  • 当該条項が行政手続法2条3号にいう申請に対する処分の根拠を定めるものであって、当該条項に違反する行為が罰則の対象となる場合
  • 当該条項が行政手続法第2条4号にいう不利益処分の根拠を定める場合
  • 当該条項が民間企業等に対して直接に義務を課しまたはこれらの権利を制限するものであって、本手続の趣旨にかんがみて対象とすべきものと判断される場合

上記に掲げた基準を踏まえて各省庁がノーアクションレター制度を利用できる法令の条項を事前に指定しています。

制度の利用には、照会内容と行政機関の回答が公表される事に同意している事(紹介者名は公表しないことも可能)が要件となります。

また、個人情報保護委員会、内閣官房、内閣法制局等は手続の対象とすべき所轄法令が無いため、制度自体の導入をしていません。

しかし問題となるケースは個人情報保護に関する法律等の適用関係が多く、この場合は担当省庁への直接の照会か、後述するグレーゾーン解消制度を利用する事となります。

2014年に創設されたグレーゾーン解消制度では、ノーアクションレター制度と異なる点が2点あります。

ノーアクションレター制度との相違点①

事業者に具体的なビジネスプランがあり、当該ビジネスプランが複数の法令との関係で適法関係を確認する必要がある場合についても、ビジネスプラン全体に着目した制度であること

ノーアクションレター制度では基本的に、ある企業がどのような行為をすることが具体的な法令の条文に違反しているかを確認するため、グレーゾーン解消制度の方がよりビジネスの実態に沿った照会ができると言えます。

ただし、グレーゾーン解消制度でも事業が具体的に『○○法の○○上に違反するか否か』という形で照会する必要があり、当該事業計画に関係するすべての法令の適法性を確認する制度ではないことに注意しましょう

適用の範囲

  • 新たな事業であること
  • 規制を所管する省庁だけではなく、事業を積極的に推進する立場から規制の緩和等に働きかけを行う役割の事業所管省庁が存在すること
  • 規制の根拠となる法令が限定されていないこと

ここでの新たな事業とは単に「新しく始める事業」の意ではなく、『新商品の開発または生産、新たな役務の開発または提供、商品の新たな生産または販売方式の導入、役務の新たな提供方式の導入その他の新たな事業活動』のうちで、当該事業を通じて『生産性の向上または新たな需要の開拓が見込まれるもので、公序良俗に反しないもの』である必要があるため、既存の事業については利用できません。

ただし実証的に実施をしているだけの場合や、同じ事業について新たな機能を付加する場合等についても新規事業性が肯定されることもあり、既に開始している事業でも利用例はあります。

とはいえ、既に開始している事業についてグレーゾーン解消制度を利用する場合、もしも不適法の回答が出た場合は、事業の継続・会社の存続に影響を及ぼしかねない為、慎重に検討する必要があるでしょう。

ノーアクションレター制度との相違点②

事業所菅大臣が窓口になり、そのビジネスプランを全体としてみて規制担当大臣に働きかけるなど、事業所管大臣がサポートすること

事業所菅大臣が当該事業の規制を所管する大臣と異なる場合には、申請した事業者に代わって規制所管大臣に確認を求め、受けた回答を事業所管大臣が申請者に回答することとなっています。

事業所管大臣とは『新事業活動に係る事業を所管する大臣』とされており、これは事業者が規制所管省庁に直接紹介することに困難が伴うケースもあり、事業所管省庁が代わりに照会を行うことで、事業を推進する役割を担う狙いがあります

ただし、事業所管大臣が経済産業大臣である事例が多く、 規制内容に詳しくない経済産業省が間に入ることでより時間がかかってしまう、というデメリットもあるようです。

またグレーゾーン解消制度においても、照会と回答内容は、法律上公表することとなっています。
(消費者庁HP:グレーゾーン解消制度 )

その他の関連制度

グレーゾーン解消制度の導入とともに、産業競争力強化法に基づき新たに2つの制度が導入されました。

新事業特例制度

グレーゾーン解消制度の活用の結果、企業の事業計画が規制の適用を受けると判断された場合に、企業側がその規制の緩和を求める意向を示した場合に活用できる制度

≪適用の流れ≫

  1. 事業者が規制の特例措置を提案
  2. 事業・規制所管両大臣が協議
  3. 特例措置を創設
  4. 安全性等を確保する措置を含む事業計画の認定
  5. 規制の特例措置の認定

新事業活動を行おうとする事業者が、その支障となる規制の特例措置を『企業単位』で提案することができます。

事業者の技術力等に着目し、全国一律の規制改革を先導するとともに産業競争力の強化と安全性等の確保・向上を同時に実現することを目指しています

ただし、規制の特例が常に認められるわけではなく、規制によって守ろうとしている保護法益などが一定担保されることが条件となります。

新技術等実証制度(規制のサンドボックス制度)

イノベーション創出のために2018年に創設された制度で、生産性向上特別措置法に基づき、新しい技術やビジネスモデルを用いた事業活動を促進するための制度
(経済産業省HP: グレーゾーン解消制度・プロジェクト型「規制のサンドボックス」)

≪適用の流れ≫

  1. 新技術等実証計画を作成
  2. 主務大臣に提出
  3. 新事業等効果評価委員会の意見を聴取
  4. 実証計画の認定可否を判断
  5. 実証実験

創設当初は施行後3年の時限法とされていましたが、2021年に産業競争力強化法に統合され、恒久的な制度となりました。

事業者が規制の特例措置の整備を求める場合、規制緩和しても安全性を達成することが可能となる規制の代替処置の検証を実証出来ずに検討が進まない、といった課題がありました。

こうした課題を解決するため、期間や参加者を限定することで、規制が適用されない環境下で新しい技術等の実証を行うことができるようにするものです

グレーゾーン解消制度と同様、利用できる分野・法令に限定はなく、新事業の迅速な実証を可能とし、実証で得られた情報・資料を活用できるようにして規制改革を推進するための制度です。

実証実験終了後の流れ

  1. 当該実証計画の事業所管大臣が、規制の特例措置の整備および適用状況・諸外国における同様の規制状況・技術の進歩状況等を踏まえ検討
  2. その結果に基づき規制の撤廃又は緩和のために必要な法制上の措置・その他の措置を講じる

法令の適用関係が不明な場合の方法としていくつかの手法をご紹介しましたが、いずれを使うのが適切かについては、具体的な案件により異なるため、この方法が最適と断言することはできません。

案件によってどの制度を利用するか、メリット・デメリットを踏まえ、慎重に検討が必要です。

まずは新規事業をおこなうにあたり、違法スキームとならないよう関連する法令について事前調査をし、どのようなリスクが存在するかを検討しなるべく違法となる可能性が無いように確認しながら進めていきましょう

関連用語

  1. インボイス制度についての見直し

  2. ストックオプション税制の拡充

  3. 定額減税の実施

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