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M&Aで会社を譲渡する際、悪質な買手に騙されない留意点とは?

中小企業のM&Aが活発化して成約件数も年々増加し、公表件数で4千件以上が成約しています(出所:レコフデータ-MARR online)。一方、M&A取引に関するトラブルも増えており、中小企業庁では中小企業M&Aガイドラインを公表し、M&A支援機関登録制度を創設して、M&A事業者に対して行動指針の普及と徹底を図っています。しかし、そのような状況でも複数の悪質な買手によるトラブルが発生しています。

◆悪質な買手が再生型M&A名目で中小企業を買収して現金を抜き取り倒産させるケース

問題となったケース(一例)

  • 問題の買手は、東京都千代田区の投資会社の株式会社ルシアンホールディングス(以下、ルシアンHD)
  • 2021~23年にかけ、全国の37社が被害に遭い、11社が営業停止となり、5社が倒産した(2024年9月時点)
  • 業種は飲食会社や建設、電気工事など幅広く、M&A仲介業者も買収を持ちかけていた
  • 関与したことが発覚したM&A仲介会社は、バトンズ、マイナビM&A、ジャパンM&Aソリューション、ペアキャピタル、インテグループ、ウィット(出所:2024年5月13日の朝日新聞デジタル)
  • いずれも上場企業や上場企業子会社のM&A仲介会社であった(他に関与したM&A仲介会社の有無は不明)
  • 問題発覚後もルシアンHDに対して、M&A仲介会社から買収打診のダイレクトメールが送付されていた
    (出所:2024年7月11日の東洋経済オンライン)

◆詐欺的手口の概要

ルシアンHDの手口概要

  1. 買手(ルシアンHD)は再生型M&Aが得意であると吹聴し、経営難の会社に接触する
  2. 買手(ルシアンHD)は売主に金融機関の連帯保証を外すと約束する
  3. 買手(ルシアンHD)が経営難で株価が低い企業を買収する(数百万円で100%株式譲渡など)
  4. 買収後に買収対象の会社から現金を抜き取り、買手(ルシアンHD)最高責任者は音信不通になる
  5. 買収前に約束した売主の連帯保証は外されず、売主が金融機関から現金を抜き取られた後の会社の連帯保証人として請求を受けてしまう。また、給与未払、税金滞納の状態。

◆詐欺被害に遭いやすい売主(株主)

詐欺被害に遭いやすい、売却後に問題が発生する可能性が高い売主(株主)

  1. 有利子負債が大きくて純資産の少ない会社(安く買収できる会社)
  2. 経営難、業績悪化で、売主が急いで売却しようと焦っている会社(おいしい話に乗りがち)
  3. 借入は多いが現預金を多く保有している会社(多額の現預金を抜き取れる会社)
  4. 全部受け身で買手を探している(マッチングサイトに掲載して待ちの姿勢、M&A仲介会社の言いなりなど)
  5. 事業上のシナジーを無視して売却先を決める(金額の条件さえ良ければ買手は誰でも良いなど)
  6. 売主が費用を惜しみ法務アドバイザーの弁護士を起用していない(法務リスクをきちんと確認せずに甘く見ている)

◆詐欺被害を防ぐ方法

詐欺被害を防ぐために現実的に取りえる方法

  1. 買手企業の決算書等を基本合意前に確認する
    ⇒出さない買手、創業直後で出せない買手とは取引を進めない
  2. M&Aにおける法務アドバイザリーの経験が豊富な商事弁護士を起用する
    ⇒街のよろず弁護士でなく、M&A取引経験が豊富な商事弁護士の場合、重要な論点を的確に捉えて安心
  3. クロージング後のトラブルを防ぐように株式譲渡契約書の修正や交渉を行う
    ⇒弁護士とM&Aアドバイザーとの協議により保守的なスタンスで交渉を進める
    ⇒特に、株式関連と連帯保証関連は、安易に妥協せずに交渉を進める
  4. コンプライアンス調査機関を活用して買手調査を行う(買手企業及び代表者や役員)
    ⇒銀行融資を利用していない買手の場合、銀行でのコンプライアンスチェックを受けていない可能性が高い

買手企業から提示される意向表明書(LOI)だけで判断するのではなく、買手企業の経営動向について踏み込ん
だ情報(決算書、商業登記、信用調査会社レポート、新聞記事等)を入手して精査した上で判断することをお勧めし
ます。多少の費用はかかりますが、必要不可欠な検証事項としてお勧めします。

こちらからもご覧いただけます→ASAHI NEWS 令和6年12月10日 第177号

提供元:朝日税理士法人

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