1.相続人が行う預貯金解約は意外と手間がかかる
ご家族に相続が発生すると、故人の遺産全体を把握して、様々な相続手続きをしていかなければなりません。
その中で、ほぼ確実に発生する手続きが預貯金の解約手続きです。
日本で生活をしている人で預貯金を全くお持ちでない方は、ほぼいらっしゃらないかと思います。
特にご高齢の方であれば、ゆうちょ銀行にお金を預ける、または年金の振込先指定口座としているケースが多々見受けられます。
ご本人が預貯金口座の解約を取引銀行に申し入れる場合の手続きは簡単で、申込書にサインと届出印を押印するぐらいで手続きは進みます。
ところがひとたび相続となるとそうはいかず、銀行から求められる書類が煩雑となります。
2.銀行の解約手続の実態
解約手続には、下記に挙げるような書類を事前に用意する必要があります。
- 相続人全員の実印
- 印鑑証明書(有効期限あり)
- 故人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等(現在戸籍・除籍・改製原戸籍)
- 相続届(銀行所定の用紙)
各金融機関によって書類の形式、取得方法は様々で、書き方の確認を詳細にする必要があります。
書類を入手して、事前予約をして銀行窓口に行っても、大抵は順番待ちで、30分以上待たされることもあります。
手続きの順番となっても、書類を受け取った担当の行員さんは、『上席と確認を取って参ります。』とバックヤードに入り、なかなか帰って来ません。
担当の方が戻ってきても、『後ほど相続専門部署から連絡が入る場合がございます。』と告げられ、その後、相続専門部署から電話があり、『戸籍が〇通足りてないので提出してください。』等と言われるケースは多々あります。
金融機関の窓口対応は、大抵は9:00~15:00まで、お仕事をされている方は、忌引き休暇・有給休暇を利用して手続きしなければなりません。
ここまで読んで頂いただけでも、一筋縄ではいかない手続きだとご認識頂けたのではないでしょうか。
3.遺産承継業務を専門家に依頼するメリット
そんなご面倒なお手続きですが、ご遺族の負担を少しでも減らすべく、当法人は遺産整理業務(預金等解約業務)を積極的に提案し、受任しています。
預金解約業務は、頑張ればご自身でも出来ますが、その費用対効果等を鑑みると、専門家に依頼する方がはるかに楽な場合が多くあります。
専門家に依頼するメリット①
書類の取得、窓口とやり取りに費やす時間を削減できる
遺産承継業務は、とにかく細かい確認や書類のやり取り、対面・郵送問わず窓口担当との連絡・確認などに時間を割かれます。
実際に最初は相続人ご自身で始めたお手続きでも、あまりに修正・再提出が重なり当法人にご依頼頂いたケースや、相続・遺産整理業務を熟知している当法人が銀行とご遺族との間に入った事で、順調に解約手続きが終了したケースは数えきれない程あります。
専門家に依頼するメリット②
専門家が代理人として手続きすることで金融機関の対応が変わる
遺産承継業務をご遺族がご自身で行う場合、こういった手続きに疎い方が大多数です。
金融機関の担当は聞かれた事には答えてくれますが、ある種、画一的な返答しかしてくれません。
実はよくある話なのですが、銀行内での手続きの都合上提出すべきとされている書類でも、法的根拠に則って考えると実は不要だった、といったケースがあります。
このようなケースへの対応も、相続に詳しくないご遺族の場合、そのまま言われたとおりに対応せざるを得ません。
しかし、専門家が法的根拠を示したことで、現状の提出書類だけでOKとなり、その後の対応がスムーズになる、と言った実例があります。
4.遺言書がある場合の銀行実務
次に、遺言書がある場合の銀行実務を取り上げてみたいと思います。
自筆証書遺言(手書きで書いた遺言)がある場合、家庭裁判所の検認手続きを済ませていれば、法律上、公正証書に匹敵する効力を持ちます。
しかし自筆証書遺言には下記のような厳格な要件があります。
- 全文自書
- 日付の記載
- 氏名の記載
- 押印
ひとつでも要件を欠いていると、せっかく書いた遺言書でも法的に無効となってしまいます。
なお民法改正により、2019年1月16日より一部緩和され、財産目録部分についてはPCで作成したものや通帳のコピーでも可能となっております。
また、預金債権の特定を誤ったり文言を間違えてしまうと、せっかく書いた遺言を使っても手続きが出来なくなってしまうケースが多く見受けられます。
下記に、過去に手続きに使えなかった記載例を掲げます。
- 〇〇銀行は妻●●に任せる
「任せる」は、管理なのか相続取得させるのか意図が不明瞭で、手続きすることが出来ません。
- 遺言内容をレコーダー等に録音している
電子機器は容易に改ざんされる可能性がある為、遺言として認められません。
- 押印がない
- ワードで本文を記載し、氏名と押印のみがある
どちらも自筆証書遺言の法的要件を満たしていないために無効となります。
上記の様な事例では、遺言を利用しての手続きが一切出来なくなる可能性がありますので、一度司法書士等の専門家に見てもらったほうが有用でしょう。
上記の要件をクリアして、ようやく遺言を利用しての手続きに進んだ際、多くの銀行担当者に言われてしまう内容が、下記の事項です。
- 『当行では、公正証書による遺言しか受け付けしません。』
- 『遺言に加え、相続人様全員の実印と印鑑証明書を取り付けてください。』
- 『遺言執行者を立ててもらえないと受付できません。』
1と2は頻繁に言われることなのですが、そもそも遺言を書く大抵の方が、
- 判を貰えそうにない相続人がいる
- 前妻との間にお子さんがいる
- 行方不明の相続人がいる
などの事情を踏まえて書いているケースが多く見受けられます。
そのため、上記2のように、相続人全員の実印・印鑑証明書を取り付けるとなると、そもそも遺言者が遺言を書いた意味がなくなってしまいます。
当法人ではこのような場合、法人として遺産承継業務受任者となり、法律知識を駆使して銀行に粘り強く交渉をしていきます。
また、3のような指摘を受けた場合にも、家庭裁判所に当法人を遺言執行者とする申立を行い、迅速に手続きを進めることが可能です。
銀行により必要な書類等は千差万別ですし、遺言のある場合の手続きとなると、対応もかなり変わって来ます。
当法人では、豊富な相続に関する知識と登記手続き、解約手続きのみならず相続税などの周辺知識にも明るい司法書士が、専門チームにてご対応致します。
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