1.はじめに
家族や親族の誰かが亡くなると、葬儀をはじめ、保険や年金の解約など様々な手続きをしていく必要があります。
それ以外にも、被相続人(故人)の所有していた財産= 遺産(相続財産)についても同様に手続きをしていかなくてはなりません。
この記事では、相続手続きの流れと押さえておきたいポイントについて、相続について全く知識のない方にもわかりやすいように解説していきます。
1-1.相続手続きとは、遺産を相続する際に必要な手続きのこと
相続手続きとは、遺産を相続する際に必要な手続きのことを指します。
被相続人が生前に扶養していた家族の生活を維持するためにも、被相続人の財産をその家族に承継させる必要があります。
また、相続人が誰であるかを確定させるためにも必要です。
被相続人(故人)が亡くなった時点の血縁関係によって、相続人となる人が確定していきます。
家族構成は家庭により千差万別ですし、相続人にも更に相続が発生したりすると、相続関係はより複雑になっていきます。
1-2.相続手続きが必要な理由
相続手続きをする理由を端的に表しますと、次のようなものが挙がります。
- 故人の遺産を相続人に正確に分配するため
- 相続財産の金額によっては相続税の納付が必要となるため
- 故人が所有する不動産の名義変更や預貯金口座の解約をするため
- 故人が追っている債務(借金)を相続人が背負う可能性があるため
相続手続きは複雑で、法律上の知識はもちろん、実務上での知識がないとスムーズに進めることが難しい場合があります。
また、相続手続きを怠ると、相続人の人数が増えて遺産分割がうまくいかなかったり、相続税の納付期限に間に合わずに追徴課税を納める必要が出てきたりします。
そのため、相続が発生したら遺産額の大小に関わらず、債務といったマイナスの遺産しかない場合でも早めに相続手続きを開始する必要があるでしょう。
2.相続手続きの流れ
相続手続きを簡単に表すと、次のような流れとなります。
下記より詳細を確認していきましょう。
2-1.相続人・遺産の確定
相続人の確定は、戸籍謄本や遺言書などを参考に行われます。
正しく法定相続人を確定するためには、本籍地を管轄する役所等で戸籍謄本や除籍・改正原戸籍等を取得する必要があります。
被相続人については出生から死亡まで連続したすべての戸籍が必要で、これは故人と相続人の血縁関係を証明するためです。
兄弟姉妹が相続する場合や代襲相続ではさらに複雑となっていきます。
【相続人確定に必要となる書類】
- 被相続人の出生~死亡を証するすべての戸籍等
- 被相続人の住民票の除票もしくは戸籍の附票
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の住民票
上記は相続人の確定とその後の名義変更などに必要となる書類ですが、法務局で法定相続情報一覧図を作成すると、これらすべての書類の代わりとなります。
この法定相続情報一覧図は最大で10枚まで申請できますので、様々な手続きを並行して進めていきたいときには非常に便利な書類です。
遺言書がある場合は、法定相続人全員の確定をしなくても良い場合がありますので、まずはその遺言書の内容を確認しましょう。
ただし自筆で書かれている遺言の場合は、勝手に開封してしまうと効力が無くなってしまう危険性もありますので、事前に専門家に相談する事をおすすめします。
遺産の確定は、被相続人がのこした不動産の権利証や預貯金口座の通帳、固定資産税の納税通知書等を利用していきます。
後から知らない遺産が出てくると問題になるケースがありますので、慎重に遺産確定する必要があります。
慣れない書類を調べていく作業は大変な作業ですので、自分で行うのが難しい場合は早めに専門家に相談すると良いでしょう。
2-2.遺産分割協議
遺産分割協議とは、相続人間で遺産の分配方法について話し合いを指します。
遺言書がのこされている場合には遺言書の内容が優先されますが、遺言書がない場合は、相続人間の公平性を保つために、必ず遺産分割協議をする必要があります。
遺産分割協議は原則、法定相続人全員の参加が必要となり、誰がどの遺産を取得するかを決定します。
協議内容に合意が得られた場合には、その内容を反映した遺産分割協議書を作成します。
この遺産分割協議書は、遺産の分配方法を明確にするための重要な書類です。
法律上では必ず書面にする必要はないのですが、実務上では各手続きに必須となります。
2-3.不動産の名義変更(相続登記)や預貯金の解約
相続登記は、不動産の名義変更を行うために必要です。
被相続人名義となっている所有権を、不動産を取得する予定の相続人の名義に変更するため、管轄の法務局に登記申請をしていきます。
相続登記を怠ると、不動産の売却や贈与ができないばかりか、所有権が担保されず、後の争いの種になってしまう危険性もあります。
また、相続登記については2024年4月より義務化が決定されており、相続登記しないままでいると過料(罰金)を求められます。
今後相続が発生した場合にも、既に相続が発生していてまだ名義変更が出来ていない場合にも、必ず相続登記を行いましょう。
預貯金の解約は各金融機関の窓口または相続手続センターにて手続きする事が出来ます。
金融機関によって必要となる書類は異なりますが、一般的には次のような書類が求められます。
【金融機関に提出する書類例(遺言書がない場合)】
- 解約手続き書面
- 被相続人の出生~死亡を証するすべての戸籍等
- 被相続人の住民票の除票もしくは戸籍の附票
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の住民票
- 遺産分割協議書
- 相続人全員の印鑑証明書
2-4.相続税の申告(必要な場合のみ)
相続税の申告は、被相続財産の遺産総額から各相続人が取得した遺産額に応じて、個別に申告していきます。
実は相続人全員に必ず必要な手続きというわけでなく、遺産総額が基礎控除額を超過する場合や相続税の減額特例制度を利用した場合に相続税申告が必要となります。
- 相続税申告時に必要な書類としては、
- 被相続人の出生~死亡を証するすべての戸籍等
- 被相続人の住民票の除票もしくは戸籍の附票
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の住民票
などがあります。
また、前述した法定相続情報一覧図(被相続人・相続人それぞれの住所表記があるもの)があれば、上記書類は不要です。
相続税申告書は相続税が課税される場合に提出する書類で、相続税申告書を提出しないと、罰則が科せられる場合があります。
相続税申告が遅れると、ペナルティーとして「加算税」「延滞税」という2種類の追徴税が課されます。
申告が遅れると、まずは本来納めるべきだった税額に対して原則15〜20%の割合で無申告加算税が課され、さらに、納税が遅れたペナルティーとして日割計算で課されるのが、延滞税です。
どちらも遺産額によっては非常に高額となってきますので、相続税の申告が必要な場合には必ず申告の準備をしていきましょう。
3.スムーズな手続きのためのポイント
相続手続きの事前準備として、必要書類の収集や情報収集を行いましょう。
故人が亡くなった悲しみを、家族や近しい人とゆっくり共有したいところではありますが、実際に相続が発生すると、様々な手続きに対応しないといけません。
そうなったときに慌てないよう、次の2点を意識しておきましょう。
3-1.手続きがスムーズに進むよう専門家への相談が重要
専門家への相談は手続きがスムーズに進むようサポートしてくれます。
相続手続きは複雑で、専門的な知識が必要な場合が多いです。
相続の専門家には、司法書士、行政書士、弁護士、税理士などが挙がりますが、それぞれが対応できる業務が異なるので、ニーズに応じて相談する必要があります。
例えば、遺産分割協議でトラブルになって弁護士に依頼して解決したけれど、遺産の中に不動産が含まれていれば、登記に関して別途司法書士に依頼しなければなりません。
遺産の評価額が基礎控除を超えていたら、税理士に依頼する必要があります。
専門家の中には「司法書士や税理士と提携している弁護士」、「税理士や不動産会社と連携している司法書士」など、他の専門家と連携してワンストップの解決を提供している事務所がたくさんあります。
ですから、相続手続きがスムーズに進むよう専門家への相談が重要だと言えます。
またそれぞれの専門家についても、業務に精通している専門家を選ぶと良いでしょう。
3-2.家族間のコミュニケーションが重要
相続手続きにおいて、家族間のコミュニケーションはトラブルを回避するためにとても重要です。
相続は、家族の財産の守り方を話し合うという側面があります。
本人だけで頑張らず、家族で話しながら引き継いでいくのも、相続のあり方の一つです。
また、家族間で日頃からお互いに気遣い、できるだけ話す機会を増やすことが大事です。
その結果、将来の相続でも話し合いがスムーズに進み、全員が納得する結論を導きやすくなるでしょう。
その積み重ねが、円満な相続につながり、相続をきっかけとして家族の絆が、より深まることが期待できます。
4.トラブル回避のための注意点
相続手続きを円滑に進めるため、次のような注意点があります。
それぞれ順を追って確認していきましょう。
4-1.遺留分制度とその活用方法
遺留分制度とは、一定の相続人に対して法律で認められている、遺産の最低限の取り分のことです。
遺留分が認められている法定相続人は、故人の配偶者(夫や妻)、故人の直系尊属(父母や祖父母)、故人の直系卑属(子や孫)です。
遺留分は遺言よりも優先されるため、特定の相続人が全ての遺産を相続するという遺言があったとしても、遺留分を主張して取り分を確保することができます。
この制度を活用することで、相続人が不公平な遺産分割に対して、自身が受け取るべき最低限度の遺産取得割合を確保することができます。
そのため、生前対策として遺言を活用する場合には、必ずこの遺留分を意識した対策をする必要があります。
予め遺留分を想定しておくことで、仮に争いに発展しそうな場合でも、効果的な遺産相続を進めることが出来ます。
4-2.遺言書の有無とその確認方法
遺言書には代表的なもので、
- 公正証書遺言
- 自筆証書遺言
の2つがあります。
公正証書遺言の場合、遺言書は公証人が遺言者の嘱託を受けて作成し、日本公証人連合会が情報をデータベースで管理しています。
そのため、遺言書の有無をこのデータベースを利用して探すことが可能となっています。
もし遺言書が保管されていた場合には、保管されている公証役場に請求をして遺言書の謄本を発行してもらえるため、この遺言書を利用して相続手続きをすすめることができます。
自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合、上記のような検索システムはありませんので、自力で探すほかないといえます。
自宅の金庫、通帳などを保管してある場所、日記やアルバムなどを保管してある場所などを探しても無い場合には、本人が貸金庫に入れている可能性もあります。
ただし、2020年7月10日から施行されている自筆証書遺言保管制度を利用している場合、法務局で確認することが出来ます。
この自筆証書遺言保管制度とは、遺言者が自筆で作成した遺言書を法務局に預けることができる制度ですが、この制度のメリットとして、遺言書の紛失・亡失を防ぐことができます。
また、相続人等の利害関係者による遺言書の破棄、隠匿、改ざん等を防ぐことができます。さらに、遺言書の保管申請時には、民法の定める自筆証書遺言の形式に適合するかについて、法務局の遺言書保管官による外形的なチェックが受けられますので、方式が不備で無効になるおそれがありません。
今後はこの制度を利用する方も増えてくると予想されますので、自筆証書遺言が見つかった際には確認してみると良いでしょう。
いずれにしても、遺言が見つかった場合、それまでに遺産分割協議を進めていたとしても、振り出しに戻ってしまう可能性が高いので、相続が発生したらまずは遺言書の有無を確認しましょう。
4-3.財産評価と節税対策
まず、相続税の節税対策は、「財産を減らすこと」「特例や控除を利用すること」「財産の評価を下げること」が基本です。
相続税の課税対象となる財産を減らしたり、様々な特例を利用したりすることで相続税の金額を抑えることができます。
また、相続税の節税対策には、生前贈与があります。
生前贈与とは、生存している個人から別の個人に財産を無償で渡すことです。
亡くなる前に生前贈与をおこなうことで、相続税の課税対象となる財産を減らすことができます。
ただし、生前贈与をおこなうと贈与の際に贈与税が課税されますので注意が必要です。
さらに、相続税の節税対策には、生命保険金等の非課税枠を利用する方法があります。
また、養子縁組で法定相続人を増やしたり、小規模宅地等の特例を利用したりすることもできます。
いずれにしても、相続税の節税対策を検討する際には、財産評価を正しくできていることが大前提となります。
それには相続人・遺産の確定が最重要となりますので、この点をおろそかにしないように心がけましょう。
5.まとめ
相続手続きは故人の大切な遺産を正確に分配するための重要な手続きです。
単純な資産ではなく、故人の想いのこもった遺産ですので、家族間でのトラブル回避のためにも、適切なコミュニケーションや情報収集が重要です。
相続手続きは複雑ですが、適切な知識と準備を行うことで、スムーズかつ正確な手続きが可能です。
とはいえ、なかなか経験する事のない手続きばかりですから、スムーズに手続きを終えるためには専門家への相談が有効です。
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