1.相続人になれなくなってしまう行為が存在する
亡くなった方の相続人は民法により定められています。
相続人は配偶者および子、親、兄弟姉妹のうちより法定相続人の順位によって決まりますが、本来相続人となる人が既に亡くなっていたり、相続人が相続放棄をしてしまうと、それによって相続人の地位は移動していきます。
このように相続人は状況によって多少変化しますが、民法に法定されている者が相続人になることには変わりありません。
ところで民法には相続人となる人が定められていますが、逆に相続人となれなくなってしまう行為も定められています。
今回は、この『相続人になることが出来なくなってしまう行為』について解説していきと思います。
2.相続欠格事由
本来相続人になる人が相続人になれなくなってしまうことを『相続欠格』と言い、その相続欠格にあたる行為を『相続欠格事由』と言います。
①詐欺又は強迫によって、被相続人が相続人に関する遺言をし、撤回し、取消、又は変更することを妨げた者
②詐欺又は強迫によって、被相続人に相続人関する遺言をさせ、撤回させ、取消させ、又は変更させた者
③相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
④故意に被相続人又は相続について先順位もしくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処された者
上記のいずれかの行為を行った相続人等は相続人になる資格を失います。
簡単に言うと被相続人が遺言すること、遺言を撤回すること、遺言を取り消すことを詐欺、強迫によって妨げた者が①の行為になります。
一見悪質な行為に見えますが、詐欺により遺言の妨害をしてしまうことは、うっかり相続人がやってしまっていることも十分あり得ます。
軽率に嘘偽りを使って遺言書を書かせたり、変更させたりする事で、自ら相続人としての地位を失ってしまうような事はやめましょう。
②は①の逆で、詐欺や強迫により遺言書を書かせ、撤回させ、取り消させることです。
例えば、兄が弟のあることないことをでっち上げ言葉巧みに騙したり、父親を脅して遺言書を書かせたり、といった行為が該当します。
③は遺言書を勝手に書き換えたり、捨てたりしてしまうことです。
相続発生後に故人の遺品を整理していたら自分が最初に遺言書を見つけ、自分に不都合な内容であるから破棄してしまおう、と考えてしまうかもしれません。
しかし、その行為により相続人の資格を失ってしまうこともあり得るのです。
これら3つの行為は、無条件で相続人になれなくなってしまいますので、十分気を付けた方が良いでしょう。
④については言わずもがなで、明らかに相続人になれなくなってしまうことが容易に想像できます。
なお、相続欠格事由に関しては別のトピックスでも取り上げておりますので、併せてこちらもご覧ください。
3.被相続人よる相続人の廃除
相続人の行為により相続人になる資格を失ってしまう相続欠格ですが、被相続人の意思によっても相続人の資格を失わせることができます。
これを相続人の廃除といいます。
≪民法第892条より≫
遺留分を有する推定相続人が、
- 被相続人に対して虐待する
- 被相続人に対して重大な侮辱を加える
- 著しい非行がある
これらの行為があった時、被相続人は相続人の廃除をすることができる
ただし、被相続人が相続人を廃除するためには家庭裁判所の審判が必要となります。
廃除は家庭裁判所の審判によって効力が生じます。
被相続人に暴力を振るっていたりそれに等しい侮辱をしていたり、また相続人の非行が顕著な場合に認められますが、軽度の場合には廃除は認められにくいのが家庭裁判所の対応の実態です。
廃除の対象となるのは遺留分を有する相続人ですので、遺留分のない兄弟姉妹は廃除の対象となりません。
兄弟姉妹に相続をさせてたくないのであれば、遺言によって兄弟姉妹以外に遺贈又は相続をさせる事で結果的に相続人の資格をはく奪することができるので、兄弟姉妹は廃除の対象とされていません。
廃除が認められると廃除させた旨が戸籍に記載されるので、廃除された相続人は手続きを行うことができません。
このように、被相続人の生前の意思により、相続人の資格を失わせることができます。
相続欠格もそうですが、考えもなしに軽率な行動をしてしまう事で、思わぬ行為により相続人の資格を失う場合がある事を十分に理解しておきましょう。
相続・生前対策をお考えになる上で、場合によってはなかなか周囲の親族に相談出来ないようなケースもあると思います。
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