ホーム>相続対策>家族信託(民事信託)>家族信託で「上場株式」や「投資信託」を扱う方法|メリット・デメリットも解説
目次

 

1.「株式」や「投資信託」も家族信託できる

家族信託とは、認知症などによって本人の判断能力が低下したときに、信頼できる家族や親族に財産の管理・運用等を委託する生前対策方法です。

信託契約に基づき、委託者が認知症となってしまった後でも、受託者が信託財産を管理・運用できるため、成年後見制度よりも柔軟な財産管理が出来ると、近年注目を浴びています。

→【遺産相続対策に効果的な家族信託の基本と具体的な活用方法】

家族信託の信託財産には、現金・預貯金や不動産以外にも、「株式」や「投資信託」といった有価証券も取り扱うことができます。

今回は、株式(投資信託を含める)をどのように家族信託していくのか、メリット・デメリット、信託する際の注意点等を解説していきます。

 

1-1.非上場株式の場合

 

非上場株式の場合、上場株式のように証券会社の口座で運用しているわけではないため、問題なく信託財産に含めることができます。

ただし、非上場株式を家族信託するケースとしては、中小企業オーナーが自社株を信託する場合が多く、企業の経営方針を決める「議決権」の扱いには注意せねばなりません。

 

1-2.上場株式の場合

 

上場株式の場合、前提として、証券会社が家族信託に対応している必要があります。

家族信託は比較的新しい制度で、平成18年(2006年)の信託法改正により、翌年の平成19年に施行開始となりました。

施行当初は、そもそも家族信託と言う制度自体が浸透しておらず、対応している証券会社もほんの一握りでした。

制度開始より15年以上経過しているため、対応している証券会社も増加してはいる状況ですが、委託者の現在利用している証券会社が家族信託に対応していない場合、保有している株式について取扱い可能な別の証券会社を探す必要があります

 

2.家族信託で上場株式を信託する方法と手順

家族信託で株式(以後、このトピックス内では投資信託も株式に含めて記載します)をどのように信託していくかは、次のような流れとなります。

 

それぞれ確認していきましょう。

 

①家族信託の内容を証券会社に確認

通常、株式を保有するには銀行等の預貯金口座とは別に、証券会社で証券口座を開設する必要があります。

家族信託で株式を含める場合にも同様に、銀行の「信託口口座」を開設し、更に証券会社でも信託口口座を開設して運用・管理することが一般的です

そのため、証券会社が信託口口座を開設できるかどうか事前に確認する必要があります。

また、信託口口座を開設できても、委託者が保有している株式を信託財産として扱うことができなければ目的を達成できませんので、保有株式を信託出来るのか、その点についても確認が必要です。

 

②家族信託契約書を公正証書で作成

委託者の保有する株式を取り扱えることが確認出来たら、家族信託契約へと進みます。

後述しますが、基本的に信託口口座は一般口座での運用となり、確定申告が必要となります。

また、相続時の対策も検討する必要がありますので、司法書士・税理士といった複数の専門家と、信託後の対応も含めてしっかりと打合せをしておくと良いでしょう。

家族信託契約書については、後々の争いを防ぐ為にも、公正証書にて作成するのが一般的です。

また、信託口口座を開設する際に、公正証書による信託契約書を求められるケースが多いため、いずれにせよ公正証書にて作成しておくと良いでしょう

 

③証券会社で家族信託用の信託口口座を開設する

家族信託契約書に基づき、受託者の個人口座とは別の信託口口座を開設し、信託財産の管理・運用を開始します。

証券会社によっては、信託口口座の開設の条件として、委託者や受託者の個人名義の口座開設を必須としているところもあります。

証券会社によって個別で定められている要件が多いため、実際に信託口口座を開設する際の要件確認は必須事項です

また、証券会社によって扱う商品やサービス内容、手数料等が異なりますが、一般的にはネット証券の方が手数料は安い傾向にあります。

一方で、扱える銘柄数やサービス内容は大手証券会社の方が多い傾向にあるため、複数の候補がある場合は、家族信託の目的を達成するのに最適な証券会社を選択しましょう。

 

3.家族信託するメリット・デメリット3選

株式を家族信託するにあたっては、メリット・デメリットを把握しておく必要があります。

以下、メリット・デメリットを3つずつ挙げていきます。

 

メリット①:認知症発症による口座凍結対策になる

 

家族信託をする代表的な理由として「認知症対策」が挙がります。

認知症を発症すると、判断能力が低下し、本人の意思確認が取れなくなるだけでなく、詐欺や犯罪に巻き込まれやすくなります。

近年では特殊詐欺による被害が増加している背景もあり、金融機関は特殊詐欺対策を強化しているため、認知症発症を金融機関が認識すると、犯罪防止の観点から本人の口座を凍結してしまう可能性があります。

その点、家族信託で信託財産となった株式は、委託者本人の固有財産と切り離される事となります。

そのため、委託者本人の証券口座が凍結されたとしても、信託口口座の株式は引き続き受託者が管理・運用することができるのです

 

メリット②:受託者の判断で運用・売却できる

 

株式を家族信託する大きなメリットとして、受託者の判断で運用・売却ができる事にあります。

実は、証券口座の管理・売却をする方法として、家族信託の他に「代理人届」や「成年後見」を利用する方法もあります。

代理人届とは、口座名義人の子などが、文字通り代理人・口座管理人として、本人に代わり注文の発注・取引内容の確認をするための手続きです。

しかし、代理人届の場合、本人に代理の意思があることを前提に権限が委任されているため、認知症が進行し、本人の意思確認の裏付けが取れないと判断されると、取引の代理が出来なくなる可能性があります

また、成年後見では、認知症を発症した後でも、成年後見人が本人の代理人としてひき続き、口座の管理を行えます。

ただし、本人の財産保護の観点から家庭裁判所への報告義務があり、行った取引が正当な理由によるものだったか、など細かな報告をしなければなりません

→【成年後見制度とは何か?制度の概要と後見人の義務とは】

 

その点、家族信託では、委託者が認知症発症した後でも、受託者が信託契約内容に基づき判断することで取引が可能です。

特に預貯金とは異なり、株式は大きく価値が上昇・下降したりするため、急な判断を要するケースもあります。

保有していた企業の価値が急落し、何も対策出来ずにいると大きく損害が発生してしまうような場合にも、受託者の判断で対応可能です。

ただし、信託契約上では管理・運用ができるとは言っても、現状として、「家族信託では受託者は売却は出来ても、購入は出来ない。」と規定している証券会社が多いため、その点は注意が必要です

もし委託者の希望が「保有している株の売買で利益を大きく上げたい」という趣旨の場合、家族信託では保有目的の株式のみを信託財産として、それ以外の株式については、当面は代理人届を利用する、といった選択も必要でしょう。

 

メリット③:遺言代用信託で相続時のトラブルを回避できる

 

家族信託では、遺言代用信託と言って、遺言と同様の効果を持つものがあります。

家族信託の終了時に、残余財産の帰属権利者(最終的な信託財産の承継先)を指定しておくことで、遺言と同様に、その人に財産を承継させることができます

更に、遺言と異なる点として、家族信託は委託者と受託者の当事者間での契約行為のため、信託開始時点で信託財産の承継の効果をある程度担保することができます。

→【家族信託を使って「遺言」と同様の効果を得る方法とは?|「遺言代用信託」の活用方法や遺言との違いについて解説】

また、信託契約で事前に「帰属権利者を○○に指定する」と設定することを周囲に伝えることができるため、相続時のトラブル回避にも繋がります。

 

デメリット①:株式の保有期間がリセットされる

 

株式を信託口口座に移管した段階で、それまでの委託者固有の財産とは切り離されることになります。

そのため、株式の保有期間についても、一度リセットされる事となります。

信託財産となった株式が、保有期間によって株主優待を受けられる類のものであった場合、保有期間がリセットされることで優待を受けられなくなる可能性があります

 

デメリット②:一般口座でしか運用できず確定申告が必要となる可能性がある

 

家族信託においては、証券会社によっては特定口座やNISA口座が利用できず、一般口座の開設しかできない可能性があります。

一般口座の場合、特定口座と異なり、毎年の確定申告を自ら行う必要があるため、受託者の手間が増えることになります

また、元々がNISA口座であった場合、一般口座に移管した以後は、売却の際の非課税措置を受けられないため、その点にも注意が必要です。

 

デメリット③:扱う証券会社や投資商品が限られる

 

前述のとおり、そもそもの信託口口座の開設や、取り扱える株式自体が限定されるケースが多く、結果的に家族信託を利用できない場合があります

管理・運用する受託者にとっても、非常に使いにくい証券会社になってしまう可能性もありますので、当事者間で事前によく話し合っておきましょう。

また、信託口口座の開設基準として、次のように定めているケースがあります。

  • 受託者を個人とする
  • 当初受益者の死亡を信託の終了事由とする

この条件の場合、いわゆる受益者連続型信託や法人を受託者とするスキームは利用できないため注意が必要です

 

4.まとめ

  • 株式や投資信託も家族信託の信託財産に含めることはできる
  • 銀行の信託口口座とは別に、証券会社の信託口口座の開設も必要
  • 信託契約書は公正証書で作成する必要がある
  • 株式を信託財産にする場合の注意点や取扱いについて事前確認しておくこと
  • 最適な方法を選択するには専門家に相談すること

 

株式の取扱いについては、家族信託に限らずとも、条件が細かく複雑なケースも多いです。

また、証券会社によって各々特徴があり、どういった目的でその株式を運用していきたいのか、事前にしっかりと検討しておく必要があります。

当然、家族信託のみではなく、その他の生前対策との併用も検討する必要があるため、司法書士等の専門家に相談することを強くお勧めいたします。

家族信託をはじめとする生前対策のご相談には、目黒区学芸大学駅、渋谷区マークシティの司法書士法人行政書士法人鴨宮パートナーズまでご相談ください。

 

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