ホーム>相続手続き>不動産の名義変更>総則6項についての高裁判決

伝家の宝刀と呼ばれる総則6項の適用を否定する旨の東京高裁判決が8月28日に出され、納税者が勝訴しました。

相続人が同族会社(以下、A社)の株式を財産評価基本通達(以下、通達)に基づいて1株当たり8,186円で評価して相続税を申告したところ、課税庁は著しく不適当であると主張し、総則6項に基づいて1株当たり80,373円で評価する更正処分を行いました。なお高裁判決後、課税庁は上告を断念し、納税者の勝訴が確定しました。

総則6項とは

総則6項とは、通達第1章総則6項の略称です。通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する、とされています。相続財産は、 時価に基づき評価額を決定するとしていますが、一つ一つの財産について時価を調べることは困難であり、種類も多いため画一的な評価方法を決めるために、通達があります。実務上は、通常、通達に基づいて評価を行い相続税を計算します。ところが、通達によって評価をしても、評価が著しく不適当であると課税庁が判断した場合には、通達の評価とは異なり課税庁側が評価額を決めるのが総則6項です

事案の概要

  • A社は薬局の経営、医薬品の製造及び販売等を目的とする会社
  • 相続開始前に被相続人はA社の譲渡を検討開始
  • 平成26年1月16日、被相続人は買収会社であるB社と、相互に開示される情報の秘密保持契約を締結
  • 平成26年2月28日、被相続人はみずほ銀行とM&A等のアドバイザリー契約を締結
  • 平成26年5月29日、被相続人はB社との間で、株式譲渡にむけて基本合意を締結した。譲渡価格は、63億円(1株当たり105,068円)。なお、基本合意は、譲渡契約の締結及び譲渡予定価格について、被相続人及びB社を法的に拘束するものではないとしていた。
  • 平成26年6月11日、本件被相続人は死亡
  • 平成26年7月14日、譲渡予定価格と同じ1株当たり105,068円で、株式譲渡契約を締結
  • 相続人らは、A社株式を類似業種比準価額方式による評価額1株当たり8,186円と評価して相続税を申告
  • これに対して、課税庁は評価通達の定めにより評価することが著しく不適当と認められるとして、総則6項を適用し、A社株式の評価を1株当たり80,373円として更正処分

判示内容

  • 本件では、A社株式の評価を下げるような行為がなされたことはうかがわれない。
  • 取引相場のない株式の交換価値は、専門的評価を得ない限り判明せず、M&Aの場合でも、高度な経営判断や交渉の結果等により価格が決定されるのであって、譲渡価格が交換価値を反映したものとは限らない。
  • 国は、最高裁昭和61年12月5日判決は、相続開始時に売買契約成立に至っていなかったとしても、近い将来売買契約が成立し、売買代金債権に転化する可能性が高い場合には、その売買代金相当額が、交換価値の一つの基準になり得ると主張しているが、売買契約の成立前であって、売買契約が未だ成立していない場合とは明らかに状況を異にするものであって、近い将来における売買契約の成立及び売買代金債権への転化の蓋然性が高かったとも認めることができない。
  • 評価通達6の適用に当たり、租税回避行為があることは要件とならないとするが、当裁判所はそのような要件が存するものと説示しているものではないから、主張に対する判断の必要はない。
  • 本件売却価格が本件相続株式の客観的交換価値を反映したものであるとも主張するが、そのようなことは、相続開始時における交換価値について専門家による判定を行わない限り認定し得ないものであることは、前記説示のとおりであり、評価通達6を適用すべき特段の事情に該当するとはいえない。

※上記に関する詳細につきましては、朝日税理士法人担当者へお問い合わせください。

こちらからもご覧いただけます→ASAHI NEWS 令和6年11月11日 第176号

提供元:朝日税理士法人

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