1.遺留分対策を考えている長男からの相談
別のトピックスで、相続税を知らない司法書士について掲載しました。
→【相続税を知らない司法書士の話 ~相続で知っておきたい相続税計算の特例~】
今回は、その反対に、『民法を知らない税理士』についてお話をしたいと思います。
先日、弊社のホームページにとあるご相談のメールが届きました。
セカンドオピニオンを希望する方からのメールでしたが、ご相談の内容は下記のようなものでした。
確かに、相続が発生した時点で亡くなった方の財産を評価していく訳ですから、「遺留分請求をする際に基となる財産額が少なければ、請求できる額も少なくなる」というご相談者の考えは、一見すると道理が通っているように思えます。
しかし、現実はそう簡単なお話ではないのです。
2.民法を知らない税理士の提案
ご相談者様には仲の悪い兄弟がおり、ご両親は全財産を長男であるご相談者様に相続させる旨の遺言を書いているそうです。
しかしいざ相続が発生した際に、兄弟から遺留分請求されるであろうことは容易に想像が出来るため、「将来、相続が発生したときに請求される遺留分を少しでも減らしたい。」とご希望でした。
ご面談して話を伺うと、ご相談者様には顧問税理士がついており、「生前贈与で財産を少なくすれば、その分、亡くなったときの遺産も減るので、遺留分の金額も減らせる」と提案されたそうです。
3.生前贈与した財産は遺留分計算では持ち戻し対象
生前贈与で渡した財産は特別受益に該当し、遺留分の計算上、持ち戻して計算されます。
つまり、生前贈与をしても請求される遺留分は減らないのです。
さらに顧問税理士から「不動産を買えば遺留分を減らせる」とアドバイスを受けたそうで、父を説得して、投資用不動産を購入させたそうです。
残念ながらこのアドバイスも間違っています。
確かに不動産を買えば、購入金額と相続税評価額との差額によって相続税を減らすことは可能です。
相続税について知識のある税理士ならば、このような提案をすること自体は妥当だと言えるでしょう。
しかし、遺留分の計算は相続税の計算方法とは違い、相続税評価額で行うわけではないのです。
4.遺留分請求の不動産評価額は相続税評価額と異なる
不動産について遺留分請求をする際の評価額に関しては、『遺留分を請求する側と請求される側が、その物件の適正な時価を算定し、両者が納得した価格を基準に遺留分の計算をする』ことになります。
例えば新築のタワーマンションの一室を1億円で買い、十数年後に相続が発生し相続税の評価額が2,000万円になったとします。
相続税計算では2,000万円として扱っていきますが、その物件の市場価値が当時と変わらず1億円のままなら、1億円を基に遺留分を計算することになります。
つまり、不動産を買っても遺留分が減るわけではないのです。
※不動産が劣化し、市場価値が下がればそのぶん遺留分も減る事になります。
5.まとめ
- 『生前贈与』をする際には、税制上の知識、民法上の知識の両方が必要となる
- 遺留分侵害額減殺請求の対策には高度な専門知識が必要不可欠
税理士は税金計算の専門家ではありますが、相続に関する制度や法律知識については、一般の方とほとんど変わらない場合があります。
また、相続税を専門としている税理士は、実は業界でも一割程度に過ぎないと言われています。
当法人では民法の相続法を熟知した司法書士・行政書士が、相続税に詳しい提携税理士とともに総合的な相続コンサルティングをご提供いたします。
相続手続・生前対策をお考えの方は、渋谷区マークシティ、目黒区学芸大学駅の司法書士法人行政書士法人鴨宮パートナーズまで、お気軽にご相談下さい。
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