ホーム>相続対策>家族信託(民事信託)>不動産の共有によるトラブルを家族信託で解決!!
目次

 

ご実家の不動産が両親共有名義になっている、または、相続が発生して相続人同士で共有名義にした、という方はいませんか?

父に相続が発生し、一緒に住んでいた母と息子がそれぞれ名義を持つといったケースや、

遺産分割で揉めないように兄弟間で共有名義にした、というケースなどはよくあることです。

ただし専門家目線で見ていくと、不動産の共有は、時間の経過とともにトラブルの元となるケースが非常に多い、と言わざるを得ません。

今回のトピックスでは、不動産の共有によるトラブルを家族信託を活用することで解決する方法と、その際の注意点についてもご紹介いたします。

 

1.共有名義の不動産はトラブルの元になりやすい

前提として、不動産を共有名義で持つことが間違っている、という訳ではありません。

共有名義にすることで享受できるメリットも確かに存在するからです。

いくつかの例を挙げてみましょう。

  • 価格の高い不動産でも住宅ローンの審査が通りやすい。
  • 住宅ローン控除を二重に受けられる
  • 不動産の譲渡益(売却益)にかかる特別控除を人数分受けられる
  • 不動産から発生する収益を公平に分配できる

不動産を共有名義で所有することによって、控除など、主に税制面でのメリットがあります。

譲渡益に係る特別控除については、他のトピックスにて解説していますのでこちらをご参照ください。

→相続空き家の3,000万円特別控除の特例|適用要件と手続き・改正内容を詳しく解説

 

また、賃貸アパート等は、相続発生後も定期的な収益が見込める為、相続人各々の老後の足しにと、共有名義にすることも多いでしょう。

とは言え、先述のとおり、不動産をそのまま共有名義にしておくと、以下のような理由からトラブルの元になりやすいのも事実です。

 

それぞれ確認していきましょう。

 

1-1.「誰が使うか」で問題になる

 

夫婦名義であったり、親とひとりの子間での共有名義の場合、相続が発生しても、その後も共有者がその家に住んでることも多く、さしたる問題にはなりません。

問題となりやすいのは、相続によって空き家状態となった不動産を共有するケースです。

  • 誰かがその不動産に住むのか
  • 誰が不動産の管理をするのか
  • 発生する固定資産税等の支払いは誰がするのか
  • 賃貸に出すのか、売却も検討するのか

 

上記のように相続人の互いの思惑が絡んでくるため、意見がまとまりにくくなります。

また、当初は納得して共有名義にしたとしても、ライフステージの変化によってそれぞれの考えが変化することも想定されます。

 

1-2.権利関係が複雑になる

 

次のような相続関係の場合、権利関係が段々と複雑になっていきます。

【事例1】

  • 単独名義の不動産を持つ父に相続が発生、相続人は母・長男・次男・長女の4名
  • 後に長男にも相続が発生、相続人は配偶者・長男の子2名の計3名

 

事例1の相関図

上記関係性で共有名義にした場合、最初は単独名義だった不動産が、1人→4人→6人と共有者が増えていく事になります。

次男・長女にも配偶者や子がいると、時間の経過とともにその数は更に多くなります。

空き家問題の背景の一つとして、放置状態のまま相続人がどんどん多くなって遺産分割がまとまらない、といったケースも多いのです

 

1-3.管理・活用等がやりにくくなる

 

ここで、共有名義の不動産の扱いについて簡単に触れておきます。

共有名義の不動産では、共有者がそれぞれ所有している割合を、持分割合といいます。

仮に2人で1/2ずつ共有している場合、「不動産の右半分・左半分」といった訳ではなく、「不動産全体の1/2」ずつを所有している、という意味になります。

各共有者は、持分割合に応じてその共有物の全部を使用することができます(民法249条)。

とは言え、共有物には次の3つのルールが設けられています。

 

保存行為

建物の修繕等、共有不動産の現状を維持するための行為

⇒持分権者が単独で実行できる(民法252条但書)

 

管理行為

建物の賃貸借契約の締結等、共有不動産の性質は変えずに利用や改良をする行為

⇒各共有者の持ち分の価額の過半数の同意により実行できる(民法252条)

 

変更行為

建物の解体や建て替え、不動産の売却等、共有不動産の形状や性質を変更する行為

⇒共有名義人全員の同意により実行できる(民法251条)

 

上記のとおり、賃貸に出す場合には過半数の同意が、建て替え・解体・売却等には共有者全員の同意が必要となります

そのため、意見がまとまらないとこのような管理・活用等がやりにくくなってしまいます。

また、それ以外にも重要な事があります。

共有者の判断能力が衰える、つまり、認知症等になってしまう可能性です。

認知症等になり判断能力が衰えてしまうと、本人の意思表示を確認できないため、先述した契約行為ができなくなる危険性があります

認知症となった後でも成年後見制度を利用することで後見人が被後見人(共有者本人)の代理行為をできますが、後見人ができる事は、あくまで被後見人のためになる行為に限られます。

そのため、修繕や売却等を行おうとしても、それが被後見人にとって不利益をもたらす可能性がある場合、そもそも契約自体が出来なくなってしまうのです

 

2.不動産の共有解消には家族信託を活用しよう

不動産を共有する危険性についてご紹介しましたが、いざ「不動産の共有状態を解消したい!」と考えた時、いくつかのハードルを乗り越えなければなりません。

  • 他共有者が持分を手放したがらない
  • 持分買取のまとまった資金を用意できない
  • 持分のみの売却は市場価格が極端に低くなる傾向がある

最初は単独名義にしようと意気込んでみたものの、上記のような理由で断念してしまった、という話は実は良くある話なのです。

そこで今回ご紹介するのが、家族信託を活用した共有名義の解消方法です。

 

2-1.家族信託の定義をおさらい

 

ここで、家族信託について簡単におさらいしておきましょう。

家族信託とは民事信託契約の一種で、概要は次のとおりです。

  • 委託者‥所有する財産を託す人
  • 受託者‥信託契約に基づき、信託財産の管理・活用等を行う人
  • 受益者‥信託財産から発生した利益等を受ける人

 

信託財産が不動産の場合、登記簿上の名目の所有権と実際の価値(信託受益権)が分離します。

名目上の所有権は受託者に変更されることで、その後の契約行為や管理・活用等は受託者の判断で行えるようになります。

また、委託者=受益者として設定されている場合、実質的な所有者に変更がないため、余計な贈与税や不動産取得税が発生することもありません

家族信託について詳しく知りたい方は、他のトピックスにてご紹介していますので、こちらも併せてご一読ください。

→遺産相続対策に効果的な家族信託の基本と具体的な活用方法

 

2-2.共有名義の不動産を家族信託する方法

 

共有名義の不動産を家族信託する方法を、事例を挙げて解説していきます。

場合、次のような信託契約を結びます。

【事例2】

  • 賃貸アパートを共有名義で持つ長男・次男・三男
  • 現在、長男が3人を代表して管理人を務めている
  • 3人とも高齢のため、今後の管理等を心配している
  • 長男の子がいずれ管理人を引き継ぐ予定で、家族信託を検討中

 

事例の関係性で家族信託をする場合、次のようになります。

  • 委託者兼受益者‥3人の共有者
  • 受託者‥長男の子
  • 信託財産‥賃貸アパート(必要に応じて諸経費等)

 

共有名義の不動産の家族信託

 

家族信託することのメリット

  • 共有者の状態に左右されずに不動産の管理・活用ができる
  • 受託者が単独で判断できるため、事務作業等もスムーズに行える

 

発生した賃料収入は、これまで通りに受益者の3人が受け取ることができ、3人の共有名義を受託者に移転することで、長男の子が信託契約に基づき管理・運用していく事ができます。

将来的に売却する必要が生じた時でも、受託者が契約当事者となって進めることができるため、委託者の誰かが認知症となってしまっても問題ありません。

 

3.共有名義の不動産を家族信託する際の注意点

家族信託の活用によるメリットをお伝えしましたが、いくつかの注意点もあります。

予め次に挙げる点を把握しておきましょう。

  1. 「誰を受託者にするか」が決まりにくい
  2. 親族間でトラブルになる可能性がある
  3. 遺留分侵害のリスクがある

 

3-1.「誰を受託者にするか」が決まりにくい

 

受託者になる人は、委託者全員の持っていた権限をひとりで持つことになります。

言い換えれば、すべての責任を単独で負うことになりますので、その責任は非常に大きなものとなります

 

また、毎年の税申告や様々な雑務等も発生しますので、「受託者になる人がいない」という状況が発生する可能性があります。

家族信託は、基本的には報酬がかからないものが多いですが、一定の範囲内で受託者に信託報酬を設けることも可能です。

なかなか受託者が決まらない場合、信託報酬を設定して、受託者になる事のメリットを作る必要もあるでしょう。

 

3-2.親族間でトラブルになる可能性がある

 

先程の事例では長男の子は1人でしたが、それぞれの共有者に複数の子がいるケースも想定されます。

誰かひとりを受託者にした際に、その他の子らが、同じ相続人という立場なのに不公平と感じるかもしれません。

後々のトラブル予防のためにも、家族信託をする際に、当事者はもちろんの事、それぞれの委託者の相続人にあたる親族ともよく話し合っておく必要があるでしょう

 

3-3.遺留分侵害のリスクがある

 

家族信託全般に言える事ですが、委託者に相続が発生した際に、遺留分の取扱いでトラブルとなる危険性があります。

というのも、信託財産は元々の委託者固有の財産とは別物とされており、信託財産の帰属先は信託契約で指定することができます。

そのため、本来であれば貰えるはずであった相続財産が極端に減ってしまった、という相続人から、遺留分請求をされてしまう事があるのです

このようなトラブルを防ぐ為に、信託設計の段階から、遺留分を侵害しないように配慮することが大切です。

一般の方が個人で設計するのは非常に難しいため、司法書士等の専門家に依頼することをお勧めいたします。

 

4.まとめ

今回のトピックスを振り返ってみましょう。

・不動産の共有は後々のトラブルの元になる可能性が高い

・売買等で単独名義にするのは難しいため、家族信託を活用しよう

・家族信託することで、受託者がスムーズに管理・活用等を行える

・家族信託をする際は、当事者だけでなく家族全体で良く話し合おう

・遺留分への配慮など、専門家に相談するのが重要

 

今回ご紹介したほかにも、家族信託には様々な活用方法があります。

また場合によっては家族信託で補えない部分を、他の生前対策方法を併用することも重要です。

当法人では、家族信託をはじめ様々な生前対策方法を、お困りの内容に合わせてオーダーメイドでご提案致します。

生前対策をご検討の際は、目黒区学芸大学駅、渋谷区マークシティの司法書士法人行政書士法人鴨宮パートナーズまで、お気軽にご相談ください。

 

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