ホーム>相続対策>生命保険金を遺産相続対策に組みこむ際の注意点
目次

 

今回は、相続と生命保険金をテーマに、一般的な税務上の考え方も含めて、お話しをさせていただきます。

別のトピックスにて、生命保険に加入することが相続対策、争続対策に有効であることをご説明していますので、併せてそちらもご一読ください。

→【生命保険を活用した遺留分対策】

→【年金保険を使ったファイナンシャルプランニング】

 

1.生命保険金は『相続財産』には含まれない

まず、民法上では原則として、「生命保険金(死亡保険金)は受取人の固有財産とされ遺産分割の対象とならない」ことから、基本的には相続財産に算入されません。

また、受取手続きも銀行預金等の遺産相続の手続きとは違い、受取人自身のハンコのみで手続きが出来るのが大きな特徴です。

但し、税法上はみなし相続財産という考え方が存在し、ある一定の金額以上の生命保険金は、税務上相続財産とみなす決まりとなっています。

相続財産に算入されない生命保険金の限度額は、相続人一人当たり500万円までとなっています。(2023.4.1時点)

これを、「生命保険金の非課税枠」と言っていきます。

 

1-1.生命保険金の非課税枠の考え方

 

事例を基に、生命保険金がおりてきた場合に非課税枠がいくらまで認められるかを考えてみましょう。

【事例】

  • 父に相続が発生
  • 相続人は母、長男、長女、次女の4名

母と子3人の相関図

上記の家族関係であれば、相続人一人500万円まで非課税となりますので、最大で2,000万円までは、相続財産にカウントされないこととなります。

預貯金も生命保険金も、故人の死亡に伴って遺族に支払われる金銭という意味では性質は全く同じなのですが、受取手続きや課税の観点から考えると全く性質が異なります。

相続財産のほとんどが自宅不動産といった場合には、相続税の納税の為には自宅不動産を売却するか物納するしか方法はありません。

また、相続税がかからないご家庭であっても、相続財産が自宅不動産しかなく、相続人同士で遺産分けに関する合意が難航する場合は、やはり自宅不動産を売却し、売却代金を法定相続分通り分配するなどの方法(換価分割)を検討しなければならないでしょう。

→【相続が発生したときに知っておきたい遺産分割の3つの方法】

生前に生命保険を組んでその受取人を特定の相続人、または相続人全員にしておく事ができれば、前述した納税資金や代償金の資金対策はもちろん、預金から生命保険に組み替えた額だけ相続財産を圧縮する事になり、節税対策になります

 

2.保険金受取に期限はある??

相続人の方からご相談の際に、

『生命保険金の受取手続きだけど、証券を持っているからいつ手続きしてもいいのよね?』

としばしばご質問があります。実は生命保険にも期限があります。

生命保険金の請求権は、権利発生日の翌日から起算して3年で時効により消滅してしまいます。(保険法第95条)

生命保険の受給権が発生しているのに何もせず放置していると、3年後にはその保険証券は無効となってしまいます

(もちろん、3年経過後に保険会社が時効であることを主張しないケースもあるようです。)

この事実を知らない方は意外と多く、実際にとあるご相談の最中、

『別の司法書士さんに聞いたら、「保険金はいつ請求してもいいですよ。別に期限はありませんから。」と言われたんですけど。』

と言われたこともあります。

保険法は、司法書士でもなじみが薄い為、一般の登記を主とする司法書士事務所では、上記のような誤った回答をしてしまうケースがあるようです。

相続を専門としていて、日頃の実務で生命保険の手続き対応が絡んでくるかどうか、専門家を選ぶ時の一つの基準にしてもらうと良いでしょう。

 

3.生命保険金の課税区分

具体的な補償内容は商品によって異なりますが、まず前提として、生命保険金(死亡保険金)は被保険者が死亡するという保険事故が発生しない限りおりてきません。

交通事故や病気などで被保険者が死亡し、保険金受取人が死亡保険金を受け取った場合には、被保険者、保険料の負担者及び保険金受取人がだれであるかにより、所得税、相続税、贈与税のいずれかの課税対象になります

具体的な課税関係は、下記の例を参照してください。

相関図

【死亡保険金の課税関係表】(保険契約者:A)

死亡保険金の課税関係表

ここで注意したいのが、相続税の非課税枠として相続人一人当たり500万円の非課税枠が使えるのは、上記の表の内の②の組み方で生命保険を組んだ場合に限られます

相続手続きを行う際、相続人からお話しを聞いていて、②のケースでしっかりと相続対策をされているご家庭がある一方、残念なことに、保険の営業担当から「相続税の非課税の対象になるから」と不正確なアドバイスを受け①のケースで保険を組み、結果何の相続対策にもならなかったケースも散見されます。

保険の組み方を間違えてしまうと相続税対策になりませんので、保険を組む際は十分に注意しましょう。

 

4.保険金の受給権者が死亡した場合

仮に、①のケースで保険を組んでいる場合に、Aが亡くなった場合はどうなるでしょうか??

答えは、①の保険金は誰も受給することが出来ない。です。

なぜなら被保険者Bが亡くなっておらず、保険事故が発生していないからです。

このケースで発生する手続きは、生命保険金の受給手続きではなく、生命保険契約の契約者の地位の変更手続きです。

生命保険の契約者の地位も相続財産の一種となりますので、遺産分割の対象となり、相続手続きを行う必要が出てくる訳です

契約者の地位の変更手続きは、一切保険金はおりてはきませんが、Aが納めたこれまでの保険料をそのまま引き継ぐ意味を持ちます。

そのためAの死亡時点の解約返戻金相当額を保険会社に計算してもらい、その金額を他の財産にプラスして総財産を把握する必要があります。

もし相続税が課税される場合、上記の死亡時点の解約返戻金相当額は、相続人一人当たり500万円の非課税措置は適用されないこととなります

 

5.意図しない生命保険金の行方

最後に、被相続人が配偶者を生命保険金の受取人に指定している場合において、その配偶者が被相続人よりも先に死亡している場合の事例を見ていきましょう。

相続実務において年間に数件あるかないかですが、こういった生命保険金に関するトラブルが発生することがあります。

まずは下記の相続関係をご覧ください。

【事例】

  • 被相続人は夫、妻は既に亡くなっている
  • 被相続人には子がおらず、相続人は第三順位の姉妹のみ
  • 妻には前夫との間に2人の子がいる
  • 被相続人は生命保険に入っており、受取人は妻のままだった

相関図

上記の事例で被相続人が死亡したことにより、生命保険契約の保険事故が発生し、死亡保険金がおりることになります。

受取人であった妻は先に死亡しており、被相続人は生前に受取人変更手続きをすることを失念しておりました。

この場合、生命保険金は下記のいずれの方が取得出来るでしょうか??

  1. 被相続人のご兄弟
  2. 受取人の子供達
  3. 誰も受け取れない

答えは2の受取人の子供達が受給権者となります。

保険法では、『受取人が先に死亡している場合、その保険金の受給権は受取人の法定相続人に引き継がれ、法定相続人が複数いる場合は、その頭数で保険金を分配すること』と規定されています

生命保険金の受給権は、上記の様に保険法に根拠が置かれ、民法を根拠とする遺産相続の概念が及ばなくなります。

保険契約を締結している被相続人の意思を合理的に考えると、受取人である妻が死亡している場合において、妻の前夫の子供達に保険金を渡したいとは、よっぽどの特殊な関係性がない限り、考えにくいように思います。

しかしながら、保険法では先の事例の様に理不尽な結末を招いてしまうことがあります。

このような場合に備え、受取人が先に死亡している場合、保険会社にすぐに連絡をして次期受取人が誰になるのかの確認をとり、ご自身の希望と異なるのであれば予め受取人の変更手続きをしておくことをお勧め致します

 

『相続が発生したら、この土地を処分して相続税の納税に充てよう。余ったお金は相続人のみんなで分配しよう。』といった具合に初めから計画していればいいのですが、どうしても土地を減らしたくないとか、自宅を相続する代わりに他の相続人に代償金を支払う資力がないといった場合には、生命保険金が入ってくることは非常にありがたいものです。

当法人では、遺言のご相談を受けた場合はもちろんのこと、相続の相談で故人に配偶者がいる場合には、二次相続も睨んで相続対策としての生命保険加入等のご提案もさせて頂いております。

まずは、司法書士法人行政書士法人鴨宮パートナーズまでお気軽にご相談下さい。

 

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